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8-14 結婚式 4

Aвтор: 結城 芙由奈
last update Последнее обновление: 2025-05-31 21:12:32

「折角のおめでたい席なのにお騒がせして申し訳ございませんでした」

「「「「「……」」」」」

5人の男性達は少しの間、黙って修也を見つめていたが、やがて1人が言った。

「い、いえ。こちらも盗み聞きするような真似をしてすみませんでした」

それを見た他の4人の人物たちもそれぞれ謝罪の言葉を口にした。すると今度は琢磨が頭を下げてきた。

「こちらこそ申し訳ございませんでした。失礼な態度を取ってしまってお詫びいたします」

琢磨が頭を下げたのを見た翔も流石に黙っていられなくなった。

(修也も琢磨も謝罪したって言うのに俺だけ言わないのは大人げないな……)

「お騒がせしてしまい、申し訳ございませんでした」

翔が謝ったのを皮切りに徐々にテーブルは和やかなムードになり、気が付けば彼等はビジネスの話に興じ始めていた。しかし、朱莉は彼等の話に全く付いていくことが出来なかったので蓮のおむつ替えのついでに席を立った。

披露宴会場のスタッフにおむつ替えコーナーを尋ね、そこで蓮のオムツを交換して会場へ戻ろうとした時、廊下で話声が聞こえてきた。

「……ごめん。翔」

(え?)

それは修也の声だった。慌てて蓮を抱きしめたままそっと様子を伺うと、まるで柱の陰に隠れるような形で翔と修也が立ち話をしていた。

「あれ程朱莉さんには必要以上接近するなと言ってあっただろう? 覚えてなかったのか?」

翔は朱莉から背を向けるような形で立っている。

「勿論、覚えているよ。でも席が隣同士だったから挨拶位はしないといけないだろう?」

「だが、お前は朱莉さんをずっと見つめていたじゃないか?」

「別に見つめていたわけじゃないよ」

「……お前。ひょとして……」

翔が言いかけた時、披露宴会場からアナウンスが聞こえてきた。

『そろそろ新郎新婦の御入場です。皆様、お席に戻ってお待ちください』

「翔、始まるよ」

「ああ、戻るか」

修也に促され、翔は足早に会場へと戻って行った。そしてその後を修也が追う。

「あ、私も戻らなくちゃ!」

朱莉も慌てて蓮を胸に抱きかかえ、会場へと戻って行った――

****

 その後の披露宴はそれは素晴らしいものだった。お色直しで現れた姫宮のカラードレスは見事なものだった。

ベアトップに床に広がるプリンセスラインのブルーのドレスはまるで銀河系をイメージしたかのようなドレスだった。胸もとからウェスト部分までは星屑が散り
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